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母乳+ ビフィズス菌 [母乳と細菌]

それにしても、新生児の腸管に定着するビフィズス菌(乳酸菌の一種)は、いつ、どのようにして腸管に侵入・定着するのでしょうか。

子宮内の胎児の腸管が完全な無菌であることは苦から知られています。しかし、出生後数時間で、腸管からは大腸菌などが検出され始め、これらが最初期の細菌叢を作ります。

これらの細菌は、出産時に産道や外陰部に付着していたものが新生児の口に入り、腸管に到達したと考えて間違いないでしょう。その後、新生児の腸管からは、徐々にビフィズス菌が検出されるようになり、生後1週間前後でビフィズス菌がもっとも優勢な菌種となり、大腸菌などの初期の細菌はほとんど検出されなくなります。(細菌学的に言えば、好気性代謝をする細菌が腸管内の酸素を消費して無酸素状態にし、その結果、嫌気性菌のビフィズス菌が優勢菌となり、好気性菌は減少する、と説明されている)。

この間、新生児が口にするものと言えば母乳だけだから、母乳と一緒にビフィズス菌を飲み込んだと考えるのが自然でしょう。新生児の腸管にもっとも確実にビフィズス菌を届けるには、母乳+ ビフィズをワンパックで飲ませるのがもっともベターです。

ウシの乳首には乳酸菌が常在菌として定着していることはわかっているので、ウシ乳首と物理的・化学的環境がほとんど同盲思われるヒトの乳首に、ビフィズス菌が常在していると考えるのは、あながち的外れではないのかもしれません。

乳頭(乳管) に常在するビフィズス菌の一部は、乳汁内のオリゴ糖を分解してエネルギにー源とし、乳汁が供給されるかぎり安定した生態系を作ります。そして、出産後は乳汁とともに新生児に飲み込まれるわけだ。おそらくビフィズス菌にとっては、胃と小腸(胃液と胆汁が細菌の侵入を阻止している)さえくぐり抜けられれば、大腸内も乳管内も生存環境としては大きな違いはないでしょう。
新生児が母乳を飲んで、オリゴ糖を届けてくれればそれで十分です。しかし、この乳児・母乳オリゴ糖・ビフィズス菌という鉄壁の関係も永続しないでしょう。

離乳食が始まると、赤ん坊は母乳以外の食物を食べるようになり、それに呼応するかのように、分泌される母乳量が減ってくるからです。その結果、こんどは離乳食の内容にもっとも適応した細菌種を中心とした腸内常在菌叢が形成されることになり、赤ちやんのウンチの臭いも変化していきます。
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共生体としての子ども(新生児) [母乳と細菌]

ずれにしても、乳児が経口摂取できる唯一の栄養物である母乳に、130種類ものオリゴ糖が含まれ、それが糖質全体の5% を占めているという事実は、何を意味しているのでしょうか。

たか新生児が母乳から待るエネルギーの多寡を考えるなら、糖質のすべては乳糖であるべきです。乳糖なら乳児は自前の酵素で分解でき、余さずエネルギー源として利用できるからです。

ようするに、オリゴ糖を含む母乳より、含まない母乳のほうが新生児には有利なはずです。しかも、母体側にとっても、1 30種類もの化合物を作り出すのは簡単ないのは言うまでもありません。

乳腺細胞が130種類の物質を作り出すためには、それぞれに対応した酵素が必要となり、酵素を作るためには、エネルギーとアミノ酸が必要です。つまり、130種類の物質を作るために、他の組織に割り当てるエネルギーとアミノ酸がることを意味します。

単純な収支バランスからすると、母体側は極めて無駄なことをしているように見えます。それにもかかわらず、現生の晴乳類の母乳には、このような「乳児が吸収できないオリゴとうた糖」が必ず含まれています。
進化の過程で「オリゴ糖を作らない乳腺を持つ晴乳類」は淘汰され、「オリゴ糖を産生する晴乳類」のみが生き残ったと解釈するしかありません。その理由が、オリゴ糖によって作られる腸内細菌叢がもたらすメリットであり、腸内細菌が産生する脂肪酸が、新生児の発達に必要不可欠な栄養素である、という可能性が浮かんできます。

それらが直接的に新生児死亡を減らすというメリットがあり、そのメリットは、母体がオリゴ糖を作るために費やすエネルギーをはるかに上まわっていたと考えることができないでしょうか。いずれにしても、母乳+ 新生児+ 腸管常在菌は、ワンユニットの共生体として機能しています。

だから、母乳の成分比についても、成分ごとの消化・吸収率を考えても意味がなく、共生体全体から新生児が獲得するエネルギー量・栄養素の量という観点から捉え直す必要があるはずです。

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母乳にはオリゴ糖が含まれる [母乳と細菌]

「食物に含まれる栄養素・カロリー数」と「その食物を食べて得られる栄養素・カロリー数」はイコールではなく、草食動物や雑食動物では、むしろ完全に承離しています。このような視点から、「哺乳動物における哺乳」を見直してみるとどうなるでしょうか

人間の母乳に含まれる栄養素は、母乳100 gあたりタンパク質1.1 g、脂質3.49 g、糖質6.87 gです。(出産後の時間経過によって成分比は変化する)。

糖質のうち、乳糖が6 gともっとも多く、95% を占め、それ以外は三糖以上のオリゴ糖であり、現在、約130種ものオリゴ糖が母乳中から見つかっています。

問題はこのオリゴ糖です。なぜ問題かというと、これらのオリゴ糖を、人間は基本的に分解できないからです。分解できないということは、消化も吸収もできず、栄養にもならないということを意味しているのです。

この「人間が消化できないオリゴ糖(正確にはヒトミルクオリゴ糖)」の役割がわかったのは比較的最近のことで、現在では、オリゴ糖は新生児の腸管にビフィズス菌が定着、増殖するのを助け、同時に有害細菌の定着を阻害する役割も持っていることが明らかにされています。

じっさい、新生児の腸管細菌叢を調べた研究によると、出生直後の細菌叢は、大腸菌などの好気性代謝も行なう細菌が主体だが、母乳栄養児の場合には、1週間程度でビフィズス菌主体へと変化することがわかっています。

以前の人工栄養では、新生児腸管へのビフィズス菌の定着が見られず、母乳栄養児に比べて有窟に感染症の発症率が商いことが問題だったが、オリゴ糖とビフィズス菌の関係が解明され、人工乳にオリゴ糖が∴添加されるようになった結果、人工栄養でも正常な腸内常在ル囲叢が形成されるようになったのです。

母乳中のオリゴ糖は、それほど重要な役割を担っているのです。さらに、新生児の大腸内に入ったオリゴ糖は、ビフィズス菌やその他の細菌の発酵作用により、有機酸(乳酸など) や短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸、プロピオン酸など) に変化することがわかっています。これらの有機酸や短鎖脂肪酸は、さらに別の腸管常在菌のエネルギー源として利用され、腸内常在菌のネットワークを強固なものとし、腸内環境の安定化に寄与しています。

また、酢酸や乳酸により腸管内のpHが低下して酸性環境となるため、病原菌(=中性〜弱アルカリ性の環境を好むものが多い) の増殖を阻止しているのです。

さらにこれらの短鎖脂肪酸を、新生児が腸から吸収している可能性を考えたくなります。これまで見てきたさまざまな動物の事例からすると、新生児が吸収して栄養としていると考えるほうがむしろ自然だからです。

おそらく新生児は、母乳に含まれる以上の栄養を待ているはずです。また、母乳にはブドウ糖もデンプンも含まれていないという事実も興味深いところです。

新生児期は脳がもっとも発達する時期であり、脳のエネルギー源であるブドウ糖を大量に必要とするはずなのに、新生児の唯一の栄養源である母乳には、ブドウ糖もデンプンも含まれていないからです。

ようするに、脳が必要とするブドウ糖は、経口摂取した糖質とは無関係であることがこれからも証明されるということです。

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